2020年4・5月号 KSCE通信 「喫煙所はどこですか問題」について

「喫煙所はどこですか問題」について


 2月から3月にかけて、ウィルス感染に関する情報が日々更新されている。これらの情報が不必要とは思えないし、知らせるべき情報だと思うのだが、なぜ新たな罹患者が出たという情報ばかりが優先的に伝達される必要があるのかという疑問も感じる。
 重傷者がどの地域で何人居るとか、亡くなられた方が何歳で、元々の健康状態はどうだったのかという情報を優先的に知らせることで、受け取る側の私らに、何を知らせたいのだろうかと考え込んでしまう。ウィルス感染が陽性と分かった方々が、何名亡くなられて、その方が高齢だったということ、持病があったということがワンセットになって報道されるのが、定番(ニュースの決まり文句)のようになっているように思えるのだが、そういう知らせ方で、何を伝えようとしているのだろう。

 「あなたも、高齢で持病があれば、罹患したことが分かったと同時に、死ぬことも覚悟しなくてはなりませんよ」と知らせようとしているのだろうか。こういう状況に居る多くの人は、そういう情報を優先的に知りたいと思っているということなのだろうか。ニュースを聞くたびに、何だか、何年か前に流行った「霊感商法のやり口」を思い出してしまうようになってきた。
 不安を煽って、判断力を鈍らせ、混乱した状態につけ込んで、不必要な物を購入させたりするという「やり口」と、何か似たような物を感じるのだが、ニュースでは「病気にならないための壺」を高額で購入するように誘導したりしていないので、「霊感商法」では無いと思うのだが、ニュースを聞けば聞くほど「霊感商法のやり口」と同じような気配を感じてしまう。

 改めて自分が欲しいと思っている情報は何なのかを、自身で振り返ってみると、(少なくとも、今の私が)欲しい情報は、ウィルス感染で陽性判定となった人たちは、何日くらい、どの程度の発熱をした後に陽性と判定されるに至ったのかという、罹患から陽性判定までの経過のようすについての情報が欲しい。さらに、陽性判定が出てから、発熱は何度くらいが何日続き、その後、熱が下がって、寛解状態になるまで何日くらい要したのか、その間は布団に入って横になって過ごしたのか、自宅に籠っては居たが、起きて日常活動をして過ごしていたのか……そういった情報が知りたいのだが、そういったニュースを伝えてくれる番組には、現状、出会えていない。

 手洗いなどが重要とか、マスクなどで周囲への拡散を防ぎましょうという情報は頻繁に紹介されているが、体調不良を感じてから、どのような経過が生じ、ピーク状態が何日目で、どのくらい続いて、回復の兆しが見えるのは何日目で、元の日常生活と変わらず活動できるようになるのは、何日目くらいからなのか……陽性判定を受けた人の人数が、それなりに多くなっている現状なら、そういう情報が提供できるはずなのに、それらを知らせないまま、重症化して亡くなった方の人数が何人になったのかばかりを知らせるというのは、何を意図しているのか真意を測りかねるので、「霊感商法のやり口」感を強く感じてしまうのだと思っている。


 この問題を私は「喫煙所はどこですか問題」と呼ぶことにしている。ずっと以前、ほとんどの場所で喫煙できていた時代に、特殊な事情で「禁煙」しなくてはならない場所に「禁煙の掲示」がされていたのだが、非喫煙者の健康に配慮することが通常の状態になり始めてからも「禁煙の掲示」しか示されていないままになっている。現状では「禁煙の掲示」は「全く意味をなさない情報」になってしまっているのに、昔の伝統を引き継ぐように「禁煙の掲示」が続いている。現代において、「禁煙の掲示」には「何の意味も無い」のだが、疑問に感じて修正を加えようという動きは見られず、伝統文化の継承という感じで提示されつつけている。

 「非喫煙者」にとっては、その場所が「禁煙」だと知らされても、その情報に大した意味が感じられないし、それを知ったからと言って、選択する行動が変わることは無い。「喫煙者」にとっては「喫煙所が、どこにあるか」という情報が重要であり、「吸えない場所」を知ることに意味は無い。
現状で必要なのは「禁煙の掲示」では無く、「喫煙場所がどこにあるか」を知らせる情報が必要な情報なのだ。「喫煙場所がどこなのか」という情報は、喫煙者に必要なだけでなく、非喫煙者にとっては、その付近に近づかないとか、迂廻路を探すということで、意味のある情報なのだ。

 「喫煙所はどこですか問題」に改善の兆しが見えない現状から推測すると、この先も、新たな陽性判定者が見つかったというニュースや、持病のある高齢者が何名亡くなられたかというニュースの報道ばかりが続くのだろうと推測される……本当に知りたい情報は、いつごろ、どういう方法で伝えられるようになるのだろうか……。


(スタッフT)

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